プレゼント無事選べました。相談乗ってくれてありがとう! ただ一つ気になることがあるんだけど、異性の友達に決めてもらったプレゼントをもらうのって嫌なのかな?

 ここまでメッセージアプリに打ち込んで読み返す。黒尾くんへの報告メッセージついでに気になっている件を聞いてみようとしている、のだけど。
 買ったあとに聞かれてもな、ってなるか。そう思うなら最初から相談してくるなよって話だし、自分の不安を他人に払拭してもらおうとしているのが見え見えだ。自分でそれくらい判断してくれ案件すぎるし相談した相手に失礼な気がする。
 うんうん悩みながら、どうにかこうにかメッセージを修正する。ちょっと長くなったけどこれならどういう状況でこうなったのか分かるし、黒尾くんも不快に思わないはず。よし。これでいこう。そう決心して送信ボタンを押した。

、ごめん待った?」
「待ってない! 全然待ってない!」
「あ、なら、いいですけど……?」

 思わずスマホをさっと隠してしまう。木葉が来ていることに気が付かなくてびっくりした。黒尾くんにメッセージを打っていたって気付かれたら余計に大変なことになるから慎重にならないと。
 今日は木葉へのプレゼント買ったあと、木葉と待ち合わせてデートをする予定になっていたのだ。待ち合わせ場所は駅前のカフェ。わたしが午前中に用事があると言ったらここまで木葉が来てくれることになったというわけだ。優しい彼氏で有難い。まだちょっと、そういうふうに言うのは気恥ずかしいけれど。
 スマホをテーブルに置いて木葉にメニューを渡す。「こんなところまで来てもらってごめんね」と手を合わせると、木葉は「いやいや。これくらい別に〜」と笑う。よかった。いつも通りの木葉だ。最近なぜだか目が合わない気がして、怒らせちゃったのかもしれないと気にしていたから安心した。
 あと、部内に回った黒尾くんと付き合ってるんじゃないか疑惑は無事決着した。木兎が黒尾くんと話したときにその話題を出したら「付き合ってません」と必死に否定されたそうで、それが部内を回り回って「は黒尾に振られたらしい」と歪曲して定着した。もうそれでいい。黒尾くんと付き合っているわけじゃないと分かってもらえたなら。木葉は元々自分と付き合っていると知っているわけだから、何かしら勘違いがあってそうなったと解釈してくれるはずだ。分かってくれているのか一度もその件に触れてこないからほっとしている。

何頼んだの?」
「飲み物だけだよ。このあとどこ行くかによっては何か食べようかな〜って考えてた」
「そういうことな。お腹空いてない? なんか半分こする?」
「え、いいの? ちょっと小腹空いてる!」
「はいはい、お好きなのどうぞ〜」

 やった、と思わず声に出してしまいながらメニューを受け取る。ここの生ドーナッツ食べてみたかったんだよね、なんて思いながら季節限定品を注文することにした。

「あ、木葉ごめん。お手洗い行ってきていい?」
「どうぞ〜。注文しとくわ」
「ありがとう〜!」

 バッグからハンカチだけ持ってお手洗いへ向かう。木葉、やっぱり優しくて好きだなあ。友達だった頃もいつもそう思っていた。さり気ない優しさもそうだし、自分は損してるのにそんなの気にしないってところもそう。この優しさがわたしだけの特別だったらいいのに、なんて独占欲を出してしまった時期もある。なんて欲張りなのだろうか。今でもたまに恥ずかしくなる。
 お手洗いを出てハンカチをたたみながら席へ戻る。すでに店員さんに注文してくれたらしい木葉がぼんやり外を眺めているのが見えた。その横顔を見るだけで胸の奥がきゅっと音を立てた気がする。あー、好きだなあ。そう噛みしめてしまった。

「ごめん、ありがとう〜」
「……あ、うん」

 わたしが席につくと、木葉は外を見るのをやめて顔をこちらに向ける。でも、なんとなく違和感。さっきまでと少し雰囲気が違う気がする。何か考え事をしているような顔だ。どうしたのだろう。

「木葉? どうしたの?」
「……別に見ようとしたわけじゃないんだけどさ」
「うん?」
「スマホ。通知来てた。黒尾から」

 そう言ってからふいっと視線を逸らされた。ぽかんと固まってしまったあと、思わず「あっ!」と声が出てしまった。スマホ、テーブルに置きっぱなしだった。すぐ内容を確認できるように通知にもメッセージ内容が出るようにしている。きっと木葉にそれが見えてしまったのだろう。
 なんか、誤解されてしまっただろうか。冷や汗をかきつつ「あの、黒尾くんの件なんだけど……」と中途半端な聞き方をしてしまう。誤解してないよね、と聞くのがちょっと怖かった。誤解の説明をしなければいけない展開だけは避けたかったからだ。

「うん。分かってる分かってる。大丈夫だって」

 木葉はへらりといつも通り笑ってそう言った。なんだ、よかった。やっぱり元から黒尾くんに関することは誤解せず分かってくれていたんだ。たぶん詳しい事情は分かっていないのだろうけど、わたしのことを信頼してくれているからこそ何も聞かずにいてくれていたのかもしれない。なんか照れるな。
 一人でそんなふうに照れていると、木葉がじっとわたしを見ていることに気が付く。わたしも木葉のほうを見て、とりあえず笑っておく。木葉はぼんやりその顔を見ていたかと思ったら、ほんの少しだけ笑い返してくれた。


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