※社会人設定。いろいろ捏造有り。
※モブが喋ります。


「どうも〜またお待ちしております〜」

 上品な店員さんに見送られてお店を後にした。サイズを測ってもらって、いくつか試着して、いろいろアドバイスをもらって選んだ結果。秋紀が絶対に好きであろう清潔感のあるかわいらしい色のものと、ちょっと大人っぽいセクシーな色のものを一着ずつ買った。もちろんランジェリーの話である。
 思考能力が低下している気がする。何がほしいか分からないからといってこういう性的なものに走るのはいかがなものだろうか。今考えてみれば秋紀はそこまでそういうものを求めていない気がするし、何をあげても喜んでくれるのだから素直にプレゼントを用意したほうがいいんじゃないだろうか。もう買ってしまった、所謂勝負下着≠ノ思わずため息をこぼしてしまう。サイズの在庫がちょうど切れてしまっているデザインだったから後日引き取ることにしているので今のところは手ぶらだ。でも、しっかりレシートにはそこそこの金額が刻まれている。早計だったかなあ。そう若干恥ずかしい気持ちになった。
 今日もいいものが見つけられなかった。革靴はどうだろうか、なんてちょっと乗り気になりかけてはいたのだけど、靴のサイズって実際に履かないと細微なズレを生むものだ。あげるなら絶対にちゃんと使えるものがいいし、一緒に靴屋さんに行って買うという手も考えたけれど、やっぱり目の前で精算するのもなんだか生々しい。そうなると一応の解決策もやっぱり良くない気がした。
 旅行会社の前を通ったときもひらめいた気になってしまったけど、秋紀はもちろんわたしもそう簡単に休みは取れない。二人の予定を合わせるのは至難の業だろう。いつか二人で長期休みを取って行きたいね、とは言っているのだけれどまだ実現できそうにはない。
 秋紀の誕生日当日は平日だ。その日は秋紀がどうしても外せない仕事が入っているそうで会えないことが確定している。プチ出張みたいなスケジュールらしくて帰らずそのまま泊まってくる可能性が高いとも言っていた。だから、誕生日の数日後である土曜日に会うことになっている。午前中はバレーの練習があるそうなので秋紀の家にお邪魔して帰りを待つという予定だ。それまでになんとかしてプレゼントを探さなければ。ネットを駆使して、お店を駆けずり回って。
 秋紀のほしいものってなんなんだろう。高校生の頃から「新曲のCDがほしい」とか「インクが切れたからボールペンがほしい」とか、そういう軽いものか、「あ、この車かっこいい」とか「モデルハウスって見るだけでテンション上がるよな」とかとんでもなく高いものしかほしいものを聞いたことがない。
 物欲がないってわけじゃないと思う。よく服を買っているみたいだし、持ち物は統一性があってちゃんと選んで買っていることが分かる。きっと今だって何かほしいものがあるだろうに、秋紀はわたしの前ではそれを言わないのだ。
 商業施設の外に出る。九月の終わりとはいえまだ暑さが残る空気に深呼吸する。暑いのは好きじゃない。でも、九月は好きだ。秋紀の誕生月だから。子どもみたいな理由だけれど、わたしにとってはとても大事なことだ。プレゼントに四苦八苦するのはかなり苦しいことではあるけれど、それも嫌いというわけじゃない。
 薄ら赤らんできた空を見上げる。雲が多く出ている今日の空は、ところどころに陰を作りながら美しい夕景を浮かべていて、不思議と明日も良い日になると確信が持てた。
 秋紀の誕生日まであと二日。会えるのはその先だけれど、それでもやっぱり好きな人の誕生日は日付を見るだけでにこにこしてしまう。秋紀に出会うまではなんでもない日の一つだったはずがこんなにも大切な日になっている。不思議だなあ、恋というものは。


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