
※社会人設定。いろいろ捏造有り。
※事後のお話です。
結局セクシーなほうも着させられたし、ベッドから一歩も動けないほどめちゃくちゃにされた。ぐったりしているわたしを見て秋紀が「ごめん、本当にごめんなさい」とさっきからずっと甲斐甲斐しく世話をしてくれている。
「完全に理性が飛びました。本当にごめんなさい」
「ん……びっくりしたけど、怒ってないよ」
笑ったら腰に響いた。思わず「イタ」と声に出してしまうと秋紀が青い顔でマッサージをしてくれる。冗談だよ。大丈夫です。そう笑ったけど秋紀は申し訳なさそうな顔で布団をかけてくれた。
「こういうの好きなの? ちょっと意外かも」
「好きというか、ってそういうの着ないだろ? だからちょっと暴走しました。ごめんなさい」
「……わたし別にスタイル良くないじゃん。似合ってなくても興奮するものなの?」
「興奮って言い方やめてください。あと似合ってるしかわいいに決まってます」
ベッドから降りて床に膝をつく。わたしの顔を覗き込んで「かわいい」と目を細めて笑った。くしゃくしゃになった前髪を整えてくれながら「というか本当にごめん。明日仕事行ける?」とまた心配そうにしてくれた。
腰が痛いし頭がぼうっとする。明日の朝に全部元通りになっているかなんて分からない。このまま仕事に行ったらたぶんしんどいだろうからちょっと頑張らなきゃいけないかも。
秋紀の頭に手を置く。さらさらの髪。昔からずっと変わっていない。特にシャンプーにこだわりがあるわけでも、何かケアをしているわけでもないのにムカつく。そうぼやいたら秋紀はいつも笑った後に「の髪のほうがきれいだよ」と髪を撫でてくれる。それも、昔からずっと変わっていない。
秋紀がしてほしいことは全部してあげたい。ぽつりと呟く。秋紀はあまり自分の欲を前面に出さないから、何をしたら喜んでくれるのかが分からない。いや、何をしても喜んでくれるのだけど、もっとこう、涙が出るほど嬉しいと思ってくれることが何なのかが分からないというか。
だから、嬉しかった。そりゃちょっとびっくりはしたけど、秋紀があんなふうに欲をむき出しにしてくれたことが、わたしにとっては嬉しかった。いつもわたしの体を気遣ってそれなりにセーブしてくれていたこともなんとなく分かっていた。明日に響かないように、しんどくならないように。そう思ってくれているのが分かったから、秋紀がなんとなく苦しそうにしていても黙っていた。もっと求めてくれてもいいのに。わたしがその一言を言ってしまえば、秋紀の愛情を無にしてしまうから。
「秋紀」
「ん?」
「お誕生日おめでとう」
体を起こそうとしたけどうまく体が動かなかった。情けない。照れ笑いをしつつちょいちょいと秋紀に手招きする。少し顔を寄せてくれた秋紀に、そっと触れるだけのキスをした。唇を離してから「大好き」とまっすぐ見つめて伝えると、秋紀が息を呑んだのが分かった。それからきゅっと下唇を噛んで、視線をちょっと逸らしてからまたまっすぐ見つめてくれる。左手でわたしの頬を撫でながら「俺も」とはにかんだ。その顔がとても、とても、嬉しそうで。自惚れているとは分かっているけれど、これが一番のプレゼントだったのかも、なんて思ってしまった。
「いつもこんなふうにめちゃくちゃしてもいいよ」
「ばっ、そっ……」
「ばか、そんなこと言うな、で合ってる?」
「大体合ってます……」
「顔真っ赤だよ」
秋紀の鼻をつつく。秋紀はベッドにベッドに顔を埋めて大きなため息を吐いた。したくないなら別にいいけど。そうわたしが拗ねると顔を上げて「したくないわけじゃない」と恥ずかしそうに否定してきた。
「そりゃ、こういうふうにしても、いいって言ってくれるのは嬉しい、けど」
「けど?」
「……こんなふうにしたいって思ってるんだって、思われるのが恥ずかしい、というか」
「乙女か」
「情緒がないツッコミしないでください……」
情けない声で言いながらまたベッドに顔を埋める。なるほど、そういうことだったのか。わたしにしてほしいこととか、そういうのを知られるのが恥ずかしかった。なるほどなあ。そう感心しつつ笑ってしまう。かわいい人。ちょっと変だけど。
「とりあえず、えっちな下着をつけた彼女をめちゃくちゃにしたかった秋紀への誕生日プレゼントとしては大成功、ってことで合ってる?」
「いや、別にそれを一番求めてたわけじゃなくて……というか待って、日頃からそんなこと考えてる男だと思われてる?!」
「思ってる」
「違う! 誤解です! いやめちゃくちゃ嬉しかったけど!」
また顔を上げてから、ぐしゃぐしゃとわたしの頭を撫で回して「分かってください」と恥ずかしそうに呟かれた。
「秋紀のこと、全部知りたいよ」
ほしいものも、してほしいことも、どんな欲でも。たとえ普通の人がドン引きするような性癖だったとしても、全部知りたい。そう言うわたしに秋紀は顔を赤らめて「ドン引きする性癖はない……はず……」と目を逸らした。あ、絶対何か隠してるでしょ。そうからかいつつ秋紀の頬をつついてやる。
ゆっくり視線を戻してから「笑うなよ」とちょっと悔しそうな顔をした。笑うな、とは。何か一つ教えてくれるのだろうか。ハードなものじゃなければお供します。そんなふうに笑うわたしに、秋紀が軽く口付けを落とした。突然のそれにびっくりしていると、唇を離してから秋紀は、なぜか、涙を堪えるような顔をしていた。
「の全部がほしい」
ぎゅっと力強く抱きしめられた。耳元でぽつりと「それだけ。後は何もいらない」と呟かれる。
ピーっと電子音が鳴った。びくっと秋紀が肩を震わせる。ぱっと腕をほどいて「やば、洗濯機忘れてた」と、ほんの少し涙がにじんだような声で言って、わたしの頭をくしゃくしゃ撫でた。無理させてごめん、ゆっくり寝てて。そうはにかんで脱衣所のほうへ歩いていった。
脱衣所のほうから「げ、乾燥になってる」という声がかすかに聞こえてきた。洗う前の服やタオルが入っていたから生地を傷めてしまったかもしれない。余計なことをしなきゃよかったなあ。そう少し反省したけど、すぐに首を横にする。秋紀は絶対そんなふうに言わない。余計なこと、なんて言ったほうがたぶん悲しむ人だ。枕に顔を埋めながら、ふふ、と小さく笑いが涙と一緒にこぼれた。
戻る/ Fin.