darling

ライバル?3(k)

※モブちゃんが喋り、名前があります。(今井さん:女子バレー部一年生)


 土曜日。体育館に入るとすでに来ている女バレ連中から挨拶をされた。男バレはまだまばらにしか来ておらず、女バレ連中はなんだかんだ生真面目なやつが多いと改めて実感させられた。恐らく一番乗りで来ていたらしいマネージャー陣に声を掛けつつ鞄を下ろしていると、後ろから「木葉さん」と声をかけられる。

「おはようございます!」
「おう、おはよう」
「男バレは今日夜まで練習でしたよね? 頑張ってください!」
「え、女バレって午前だけなの?」
「お昼過ぎまでなんですよ~」

 もっと練習したいんですけど、と苦笑いしながら今井さんが頭をかく。どうやらバレー馬鹿の部類らしい。それを笑いつつ「それは残念だったな」と返していると、後ろから視線を感じた。今井さんはそんなことは露知らず楽しそうに話を続けてくれている。女バレの練習メニューのこととか部員のこととか。いろんな話を相槌を打ちながら聞いていると、女バレ主将が今井さんのことを呼んだ。今井さんはすぐに返事をしてから俺に「それじゃあ! あ、日曜日本当に観に行きますからね!」と言い残して女バレのコートへ戻って行った。

「ずいぶん仲がよろしいことで」
「い、いや、ふつうだろ……」
ちゃん、今井さんと喋ったことあったっけ?」
「え、わたしですか?ないですよ」

 は首を傾げつつそう答える。白福は「そっか~」と言いつつちらちらと俺のことを見たり今井さんのほうをみたりと忙しそうだ。俺、そんなにまずいことをしているのだろうか? 今井さんは後輩だし、バレー部という繋がりがあるのだから仲良くなってもおかしくないのでは? いまいち雀田と白福が妙に当たりをきつくしていくる理由が分からない。分からない俺は相変わらずダメな男なのだろうか。

「今井さんかわいいですよね! 背が高くてモデルさんみたいで羨ましいです」

 がきゃっきゃと楽しそうに話しているのを雀田は苦笑いで聞いている。なんでもは女バレ二年とは仲が良いらしく、背が高くてスタイルがいい女バレ部員が羨ましいのだという。女バレ一年の後輩たちとも仲良くなろうとタイミングが合えば話しかけているのだそうだ。が一年生のときは人見知りだったような気がするので、かなりの成長だ。それに少し笑ってしまうとに不思議そうな顔をされた。

「いいなあ、わたしもせめてあと十センチくらい身長伸びないかな~」
「え~ちゃんはそのサイズ感がかわいいんだよ~?」
「モデル体型のデキる女になりたいです」
「私の意見真っ向スルーだね~」

 けらけら笑う白福にはどこか拗ねたように「身長欲しいんです」と言った。はたしかに平均身長より高いということはないが、突き抜けて背が低いというわけでもない。男子であれば平均以上に欲しいと思うやつが多いだろうけど、女子であるが気にするほどの身長ではないと思うのだけど。

「私はあんまり背が高いよりはちゃんくらいがいいかな、って思うけどなあ」
「かおり、背高いほうだもんね」
「えーでも、小さいとあれじゃないですか」
「あれ?」
「首が痛いです」
「たまにちゃんのこと、分かんなくなるわ~」

 は「そうですか?」と笑う。そうして俺のほうをじっと見るとなんだか不満そうな顔をした。え、俺何かしましたか? へらりと笑って返すと余計に不満そうな顔をしてなぜだか小さくため息をついた。

「俺なんかした?」
「首が痛いです」
「え、何のこと?」